究極の選択・・・

入院中に本当に困った究極の選択を迫られたので、それをSSにした・・・


実録ヘヴン



第五話 看護師七条編
  初めての手術を終え、啓太は術後の患者が入る病室で静かに横たわっていた。まだ麻酔が効いているのか、痛みは全くない。強いて言えば、暫く絶食のため栄養を点滴している左腕が微かに痛むだけだった。
  暇だな、と啓太は思った。
  そこは二人部屋で、ベッドの間は白いカーテンで仕切られていた。啓太は窓側、廊下側には年配の男がいると術前に聞いて知っていた。その人は眠っているかもしれないので、啓太は一人静かに外を眺めることにした。すると、誰かが隣の男の元へ来て声を掛けた。どうやら医師と看護師らしい。彼らの話が聞くともなしに啓太の耳に入って来る・・・
「手術は成功です」
  医師がそう告げると、隣の男から安堵の吐息が零れた。
「良かったですね」
  看護師の優しい言葉に男は小さく礼を言った。やがて医師が病状の説明を始めた。その内容から隣の男が睾丸の手術を受けたことがわかった。片方が大きく腫れてしまったらしい。同室なので仕方ないとはいえ、それは他人に聞かれるにはかなり恥ずかしいに違いない。その医師にはデリカシーがないのだろうか。
(でも、そんなこと言ってられないのか。手術が終わったら、どうだったか早く知りたいだろうから先生も説明してるんだよな。そこは我慢しないといけないんだ、きっと)
  そう思ったものの、啓太は同じ患者として隣の男に少し同情した。
  説明を終え、医師が部屋から出て行った。すると、今度は看護師が啓太の元にやって来た。
「担当の七条です。宜しくお願いします」
「あっ、宜しくお願いします」
  横たわったまま、啓太は小さく頭を下げた。七条は優しく言った。
「痛みはありませんか、伊藤さん?」
「大丈夫です」
「何かあったら、直ぐにナース・コールを押して下さいね」
「わかりました。有難うございます」
「今から抗生物質の点滴をしますね」
  七条は優しく微笑んだ。啓太はその丁寧な物言いに安心して目を閉じた。このまま、眠ってしまうつもりだったが、再び七条が話し掛けてきた。
「伊藤さん、今、お小水出来ますか?」
「えっ!? 今ですか?」
  内心、啓太は驚いて目を開けた。七条が啓太をじっと見つめている。
「やれと言われたら、出来ますが・・・」
  特に尿意は覚えてないので、啓太は少し言葉を濁した。すると、七条は小さく頷いた。
「なら、おまるか尿瓶を持って来ますね」
「・・・はい?」
  一瞬、啓太は耳を疑った。何か変な単語が聞こえた・・・
「あ・・・えっと、トイレに行ったら駄目ですか?」
  遠回しに啓太は七条の提案を拒否した。すると、七条は困った様な顔をした。
「伊藤さんは術後、六時間はベッド上安静なのでトイレには行けないんです。でも、脊柱麻酔では術後の排尿が困難になる場合があるので、早めの確認が必要なんです。若い人におまるや尿瓶はきついと先生には言ったんですが・・・ベッドの上でやるのも慣れてませんしね」
「・・・」
(そんな人いないと思う)
  心の中で啓太は呟いた。
「他には尿道に管を通す方法もありますよ」
「・・・!」
  その言葉に啓太は眩暈がした。
  こんな酷い三択が今までの人生であっただろうか。おまるか尿瓶か尿道カテーテル・・・しかも、薄いカーテン一枚で仕切られた隣のベッドには年配の男がいる・・・
(全部、嫌だ~!)
  気を取り直した啓太は必死に七条に頼み込んだ。
「何とかトイレで出来ませんか?」
「なら、先生に少し相談してみますね」
  七条は小さく頭を下げて出て行った。
  医師の返答次第で究極の選択を迫られる啓太の身は最早、風前の灯火だった。今頃、きっと隣の男も先刻の自分の様に同情しているに違いない。やっぱり医師にデリカシーはない、と啓太は確信した。そして、多分、看護師にも・・・
(わ~ん! おまるも尿瓶もカテーテルも・・・全部、嫌だ~!)
  心の中で啓太がそう強く叫んだとき――・・・
「伊藤君」
「・・・!?」
  ハッと啓太は目を醒ました。
  そこは会計室のソファの上だった。いつの間にか、うたた寝をしていたらしい。
「あ・・・七条さん」
「どうかしましたか、随分とうなされていましたが?」
  七条が心配そうに啓太の顔を覗き込んだ。啓太はガバッと起き上ると、大きく首を振った。
「だ、大丈夫です。何か変な夢を見てしまって・・・」
「夢ですか。最近、僕は夢占いに凝っているので少し聞かせて貰えませんか?」
「えっと・・・良く覚えてないので、すいません」
(あんな変な夢、人に話せる訳ない)
  更に追求される前に啓太は慌てて立ち上がった。嘘をついているせいか、少し気まずい。
「あの・・・俺、そろそろ生徒会室に戻りますね」
「わかりました。またいつでも来て下さいね」
「はい・・・それじゃあ、失礼します」
  ペコリと頭を下げて啓太は急いで会計室を後にした。その後ろ姿を見送って、ふふっ、と七条は小さな微笑を浮かべた。
「やっぱり伊藤君は素直ですね。出来れば、教えて欲しかったのですが・・・僕が囁いたおまると尿瓶で、一体、どんなも夢を見たのか」
  しかし、きっと啓太は話さないと予想していた。だから、今度はもっと明け透けな性格の人で試すことにした。
「でも、そのためには丹羽会長をまずは眠らさないといけませんね。トノサマが直ぐに見つかると良いんですが」
  背中で黒い翼が楽しそうに揺れた。そして、七条は丹羽を気絶させるためにトノサマを探しに行くことにした。
 

ゆっくり復帰~♪

復帰第一弾として久しぶりにヘヴンSSを仕上げました。少々人騒がせな出来事を啓太に当て嵌めた、題して・・・


実録ヘヴン



第四話 お騒がせ滝編
  三時限目の途中から出席しようと道を急いでいた和希の横を一台の自転車が猛スピードで駆け抜け、少し先で旋回して止まった。
「遠藤、こないな処で暢気に何してるんや!」
  滝が批難する様に叫んだ。えっ、と和希は驚いた。篠宮ならいざ知らず、滝に遅刻を咎められるとは全く思ってもいなかった。軽く頬を掻く。
「何って、これから授業に出ようかと・・・」
「アホ!そんなんどうでも良い!啓太が行方不明なんや!」
「何だって!?」
  思わず、和希は声を荒げた。どういうことだ、と訊く前に滝が一気に話し始めた。
「昨日、俺は啓太から今日の一限は休講やって聞いたからデリバリーの手伝いを頼んだんや。それやのに、啓太は待ち合わせ場所に来んかった。仕方なく俺は一人で仕事やって、二限が始まる前に文句を言おう思って電話したんや。けど、繋がらんかった。それで、ちょっと気になって啓太のクラスを覗いたら、今日は休みやって言われてな。案外、部屋で倒れてたりしてな~って心配になって寮に様子を見に行ったんや。だけど、幾らドアをノックしても返事がない。どうやら啓太は昨夜から部屋に帰ってないみたいなんや」
「そんなはずは・・・」
  即座に和希はそれを否定した。
  確かに昨夜、啓太はそこにはいなかった・・・隣にある自分の部屋にいたのだから。この数週間、互いに忙しかったので久しぶりに二人で過ごす夜に自然と身体が熱くなってしまった。和希としては啓太の疲れが溜まっている様に見えたので無理をさせたくなかったが、恋人に求められてどうして理性を保つことが出来よう。いつしか口唇が重なり、指を深く絡めて・・・啓太が意識を取り零す様にして眠りに落ちたのは明け方近くになった頃だった。それから和希も暫く寝て、午前の仕事をしにサーバー棟へ向かったのが七時。そのとき、啓太も自室へ戻ると言って起きた。
「啓太が無断外泊をする訳ないだろう。多分、俊介のノックに気づかないで、まだ寝ているだけだと思うよ」
「それはあり得へんわ。俺、めちゃめちゃ叩いたんやで。あまりに煩くて通り掛かった奴に怒られたくらいや。それにな、遠藤、啓太は幾ら寝起きが悪い言うても今まで約束をすっぽかしたことはないんや。未だに連絡もないし・・・これは完全に行方不明や!」
「・・・」
  滝の言うことはあまりに主観的だったが、一理あった。和希はポケットから携帯電話を取り出すと、登録してある啓太の番号を押した。暫く呼び出し音が続いた後、機械的なアナウンスが聞こえてくる。お掛けになった電話は・・・
「どうや?」
「・・・駄目だ。電源が切れている」
「やっぱりか。一体、啓太の奴、どこに行ったんや」
  キョロキョロと滝は辺りを見回した。和希の胸に嫌な予感が広がってゆく。
「俊介、もう一度、啓太と約束した場所へ行ってくれないか。もしかしたら、寝坊した啓太がそこで待っているかもしれない。俺は啓太の部屋へ行って中を確かめてみる」
「う~ん、あの音で寝てられるとは思えないけど、啓太やしな。万が一ということもあるか。わかった。そっちは頼むで」
「ああ、啓太が見つかったら、直ぐに連絡するよ」
  そう言うと、和希は寮へ向かって走り出した。

  啓太の部屋の前に着くと、和希は辺りに人影がないのを確かめてマスター・キーを取り出した。そっと鍵を開ける。室内はカーテンが閉まっているので酷く薄暗かった。
「啓太、まだ寝ているのか・・・?」
  和希は真っ直ぐベッドへ向かった・・・が、そこには誰もいなかった。啓太のことだから二度寝するだろうと思っていたのに、ベッドは綺麗なまま。いや、そもそも、部屋に戻った形跡すらなかった。
「啓太、一体、どこへ・・・」
  そのとき、ポケットのなかで携帯電話が震えた。滝の名前が表示されているのを見て、和希は素早く通話ボタンを押した。
「俊介、啓太が見つかったのか!?」
『遠藤、大変や!啓太がひき逃げされて意識不明や!』
「なっ・・・!」
  一瞬、和希は絶句した。しかし、そんな事故があった報告は受けていなかった。学園島で車が通る場所と言ったらサーバー棟の地下駐車場から跳ね橋へと続く道しかないが、啓太が朝からそんな処に行くとも思えない。何か変だ・・・
「今、啓太はどこにいるんだ?」
『どこって・・・え~っと、西園寺総合病院やな』
「・・・俊介」
  和希は眉を顰めた。啓太の安否を弄ぶなど冗談にしては質が悪過ぎた。俺を怒らせたいのか、と訝っていると、別の声が聞こえてきた。
『滝君、病院では携帯電話の電源は切って下さいね』
「待っ・・・!」
  そして、唐突に通話は切れてしまった。
  和希は廊下に飛び出すと、急いで上の階へ向かった。滝が居場所を掴んだということは啓太はまだ学園内にいることを意味していた。それに、どうやら会計部の二人も絡んでいるらしい。なら、啓太の居場所は自ずと限られてきた。滝の言葉から推測するに・・・
「七条さん、そこを退いて下さい」
  西園寺の部屋の前に立つ七条に和希は苛々と言った。しかし、七条は静かに首を横に振った。
「申し訳ありませんが、今は面会謝絶です」
「冗談はやめて下さい」
「冗談ではありません。今の伊藤君には安静が必要なんです」
「・・・!」
  その言葉に和希は小さく息を呑んだ。逸る心を抑え、冷静にゆっくりと尋ねる。啓太は、無事なんですか・・・?
「はい、滝君の言ったことは全部が全部、嘘ではありません。実際、伊藤君を最初に発見した人はひき逃げと思ったそうですから」
「啓太はどこにいたんですか?」
「ロビーにある自動販売機の椅子の傍に倒れていました。丁度その時間は食材を積んだ台車が頻繁に出入りしていて、生徒が轢かれているという声を海野先生の手伝いを終えて帰寮した郁と僕が聞きつけました。伊藤君は完全に意識を失って、床の上でぐっすり眠っていましたよ。余程、疲れが溜まっていたのか・・・あるいは、大人気ない誰かさんがかなり無理をさせたのか」
  七条は冷ややかに和希を見やった。
(啓太・・・)
  内心、和希は天を仰いだ。
  自分でも昨夜は啼かせ過ぎたと少し反省していた。恐らく部屋へ戻ろうとして喉が渇いた啓太は飲み物を買いにロビーに行ったのだろう。そして、椅子に座って飲んでいる途中で寝てしまい、やがて床に崩れた。その衝撃(ショック)でも起きないのは啓太らしいと言うか、そこまで疲れさせてしまった俺の責任と取るべきか・・・
  しかし、そんな葛藤はおくびにも出さず、和希は真剣な顔で言った。
「俺への文句なら後で幾らでも聞きます。とにかく啓太に会わせて下さい」
「先ほども言いましたが、今は駄目です・・・郁と寝ていますから」
「えっ!?」
  最後に付け加えられた言葉に和希は僅かに目を瞠った。七条が軽く首を傾げた。
「幾ら郁の部屋でも、ベッドは一つしかありませんよ・・・伊藤君が他の男と寝るのは焼けますか?」
「・・・」
  態と意味ありげな言い方をする七条を和希は睨みつけた。
「俺を挑発しても無駄ですよ。啓太が疲れて眠っているなら、起きるまでここで待ちます」
  すると、ふふっ、と七条は笑った。
「それを聞いて安心しました。郁の睡眠を邪魔するなら相応の報いを受けさすつもりでしたが、どうやら問題は平和的に解決出来た様です。実は先ほどから滝君の話を聞いた人達が入れ代わり立ち代わり郁を訪ねて来るので困っていたんです。では、この場は遠藤君にお任せして僕はこれで失礼しますね。昨日は殆ど徹夜でしたから、もう眠くて・・・」
  小さな欠伸を一つすると、七条は悠々とそこから去って行った。
(・・・嵌められた)
  和希は密かに呟いた。
  啓太の身を案じてとはいえ、西園寺を訪ねられる者など限られていた。嫉妬に身を焦がしながら、学園のそうそうたる面々を相手にしなければならないとは。これが恋人を愛し過ぎた報いなのだろうか。しかし、それで啓太を護れるなら・・・と和希はドアの前で気を引き締めた。
  そんな和希の苦労も知らず、啓太は未だ夢の中・・・
 

実録ヘヴン 2

先日、いつも遊びに行っているpote様のBlog『終わりの始まり』で面白いものが紹介されていました。『ひぐらしのなく頃に』的ロゴ・ジェネレーターです。早速、それを使ってみることにしました♪今月はペースに慣れるまで落ち着いてSSを書くのは厳しいので、気楽にUP出来るBlogに最近の痛い出来事が題材の小ネタSSです。題して・・・


実録ヘヴン



第三話 天然S篠宮編
  「・・・中嶋さん・・・中嶋さん、起きて下さい・・・ねえ、起きて・・・」
  明け方、啓太は隣で眠る中嶋の肩を何度も軽く揺すった。中嶋は静かに目を醒ました。まだ起きるには早い時間なので、何だ、と言い掛けて・・・僅かに目を瞠った。啓太が今にも泣きそうな顔で左耳を押さえている。
  「耳が・・・痛いんです」
  「見せてみろ」
  そう言うと、啓太は素直に顔から手を離した。すると、左耳の下辺りが不自然に腫れていた。おたふくだな、と中嶋は呟いた。
  「でも、俺・・・子供の頃、おたふくやりました。なのに、何で・・・」
  もう痛くて寝ていられない、と啓太は再び顔を押さえて二つの大きな蒼穹をウルウルと潤ませた。
  中嶋は机に置いてある時計を見た。まだ五時を少し過ぎたばかり・・・病院が開く九時まで、今の啓太はとても待てそうになかった。そこで、取り敢えず、篠宮を呼ぶことにした。この時間なら朝稽古をするために起きているはずだった。医師を志している篠宮は少なくとも自分よりは対処法などの知識がある。それに、恐らく消炎剤か鎮痛剤を幾つか持っているだろう。
  電話を掛けると、篠宮は直ぐ啓太の部屋へと駆けつけた。ベッドの上で涙ぐむ啓太を見て、篠宮は安心させる様に小さく微笑んだ。
  「診せてみろ、伊藤・・・ああ、大分、腫れているな」
  篠宮は啓太の顎を取ると、左右へ軽く振った。そして、おもむろに指先で左の耳元を軽く押した。ピクッと啓太が顔を顰めた。
  「ここは痛いのか。ここはどうだ?」
  「あっ、痛っ・・・」
  「伊藤、唾液を飲み込んでみろ」
  「・・・んっ・・・」
  言われた通り、啓太は無理やり唾液を飲み込んだ。頬の奥がギュッと締めつけられる気がした。どうだ、と篠宮が尋ねた。
  「・・・耳が痛いです」
  「ふむ・・・なら、この辺りが痛いだろう?」
  篠宮は左耳の下の辺りをいきなり指でグッと押した。
  「痛っ・・・!痛いです、篠宮さんっ・・・!」
  直接、痛みの中心に加えられた圧力に啓太は必死に拳を握り締めた。篠宮はそれに気づかないのか、そこをプニプニと押しながら、悠長に説明する。
  「ここには耳下腺という唾液を分泌する器官がある。美味しいものを食べると頬が落ちるとよく言うだろう。それは無意識に耳下腺が唾液を多く出そうとするからだ。そして、ここは押すと誰でも痛む場所だ」
  「・・・はい・・・」
  だから、何・・・と啓太は思った。俺、先刻から耳が痛いって言ってるのに・・・
  しかし、ここは篠宮が何とかしてくれると信じて啓太は黙って頷いた。中嶋が言った。
  「篠宮、こいつはおたふくには罹ったそうだ」
  「なら、おたふくではないな。あれは二度は罹らないと言われている。恐らく風邪か何かのウィルスに感染したのだろう。春は風邪でも耳下腺炎を起こす場合がある。今日は欠席して内科か耳鼻科へ行った方が良い。だが、原因がわかるまで薬は駄目だ。辛いだろうが、伊藤、冷やして我慢しろ。病院には朝一番に診て貰えるよう俺が手配しておこう」
  篠宮は持参した冷却シートを啓太の左耳の下にペタッと貼ると、急いで部屋を出て行った。
  「・・・」
  啓太は涙を堪えて中嶋を見上げた。
  結局、篠宮を呼んでも状況は全く変わらなかった。ただ、うんちくを聞いただけ・・・そのために痛む場所を何度も押された啓太は、篠宮さんの馬鹿~、と心の中で大きな石を投げた。そして、朝になるまで中嶋の腕の中で眠れぬ時間を大人しく過ごすことにした・・・
 

実録ヘヴン

一昨日、PSP版ヘヴンが発売されました♪

ネットで予約したので発売日以降の発送と思っていたら、当日に無事に届きました♪でも、発売を記念しようにもSSの更新は来週からなので寂しいな~、と湯船の中でぼんやり考えていました。そこでサイトにはUP出来ない禁断の実話を使ったパラレル風味のSSを書くことにしました♪

題して・・・実録ヘヴンです♪

第一話 黒海野編
  放課後、和希は啓太と一緒に海野のデータ整理を手伝っていた。相変わらず、雑然としている生物室だが、啓太といれば、そこも楽園になる。そんな小さな幸せを噛み締めていた和希の耳に、突然、啓太の鋭い悲鳴が聞こえた。
  「わあ~っ!!」
  「どうした、啓太!?」
  思わず、和希は叫んだ。すると、今にも泣きそうな顔で啓太が小さな流しの中を指差した。
  「ロ、ロディが・・・!」
  「ロディ?ああ、あれか」
  啓太は普通名詞を口にするのも避けるほど大の虫嫌いだった。特に繁殖力の強いあれは大きさにかかわらず大嫌いだった。まあ、好きな人がいるとは思えないが。和希の指が頬を掻いた。
  「殺虫剤を持って来るよ」
  冷静にそう言う和希の横から海野が飛び出して来た。
  「伊藤君、退いて!」
  「わっ・・・!」
  素早く海野は流しの中に何かの液体を投げ入れた。途端に辺りに広がる気持ち悪いほど甘い匂い・・・それは、いつかどこかで嗅いだことのある匂いだった。
  (ああ、そうだ・・・確か・・・MVP戦の、とき・・・)
  急速に意識が遠のく啓太を和希の腕が抱き留めた。
  「あまり深く吸うな、啓太!」
  和希は啓太の鼻と口をハンカチで覆うと、急いで流しの傍から引き剥がした。キッと海野を睨みつける。
  「何てことするんですか、海野先生!」
  「・・・っ・・・和、希・・・?」
  本気で和希が怒っているのに啓太は驚いた。そして、まだクラクラする頭を抱えながら、海野に尋ねた。
  「・・・あの・・・この液体、何ですか?」
  「あっ、これ?クロロホルム」
  にっこりと海野は笑った。
  「クロロホルムって・・・ドラマなんかに出て来る、あの・・・?」
  「うん」
  「これは、そんな可愛いレベルではないですよ、海野先生!」
  「あっ、遠藤君、わかるんだ。凄いね。うん、そうだよ。これ、クロロホルムの原液。だから、強烈でしょう?ほら、あれ・・・ロディだっけ?瞬殺だよ」
  「・・・」
  流しの中を見る勇気は啓太にはなかったが、生命力の強いロディを瞬時に抹殺するのだから、和希が怒るのは当然だと思った。それに、俺、少し吸っただけなのに頭痛はするし、吐き気はするし・・・
  「大丈夫、伊藤君?顔色、少し悪いね」
  海野が心配そうに顔を覗き込んだ。和希が海野から護る様に啓太を抱き寄せた。
  「当然です」
  「やっぱり賞味期限が切れてたからだね。次は気をつけるね」
  「賞味期限って・・・誰かに使うつもりなんですか!?」
  和希の表情が更に険しくなった。最早、生徒の立場を忘れて理事長の顔になっている。しかし、海野は全く動じなかった。ただ、いつもの様に大らかな微笑を浮かべて去って行った。
  「・・・啓太、当分、俺の傍から離れるな」
  キュッと和希は啓太を抱き締めた。うん、と啓太は頷くと、恋人の胸に深く顔を埋めた。その後、二人が暫く海野に近寄らなかったのは言うまでもない・・・

第二話 Dr.中嶋編
  穏やかな朝の光の中、啓太は夢の波間を彷徨っていた。そこに恋人の低い声が流れてくる。
  「啓太、腕を出せ」
  「・・・ん・・・英明、さん・・・何・・・?」
  「腕だ」
  反応の鈍い啓太に中嶋は根気良く言葉を繰り返した。
  啓太は布団の下からもそもそと右腕を出した。意識は再び夢幻の淵へ降りてゆく。中嶋は啓太のパジャマの袖を捲った・・・
  「痛っ・・・!」
  不意にチクッとした痛みが走って、啓太の眠気が一気に飛んだ。布団から出した腕を見ると、先端に針のついた細いストローの様なものが肘の内側の静脈に刺さっている。その中を毛細管現象で登ってゆく自分の血液を啓太は呆然と見つめた。
  そうして少量の血液を採取すると、中嶋はナイト・テーブルに用意してあった白いパレットに向かった。それには四つの小さな窪みがあり、何かの透明な液体が入っている。そこに啓太の血液を混ぜると、パレットを優しく揺らし始めた。
  「あの・・・何をしてるんですか?」
  「見ればわかるだろう。血液検査だ」
  「えっと、どうして・・・?」
  「何か問題でもあるのか?医師免許は持っている」
  「いえ、そういう意味ではなくて・・・あの・・・俺、O型ですよ」
  「そうらしいな。だが、俺は何事も自分の目で確認しなければ気が済まない性質だからな」
  手を止め、中嶋は窪みの中の血液を眺めた。ふ~ん、と小さく唸る。
  「啓太、お前は間違いなくO型だ。もう寝ても良い」
  そう言うと、中嶋はさっさと寝室から出て行った。後に一人残された啓太は完全に醒めてしまった頭と微かに痛む腕を暫く抱えていた・・・が、やがて・・・
  「英明さんの、馬鹿~」

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